相続財産の調査,相続債務,遺産の範囲,相続財産とされないもの,遺留分減殺請求権,死亡保険金,判例
相続財産の調査
相続人が相続する財産には被相続人に属した一切の財産が含まれますが、被相続人の一身に専属したものは相続されません。
もちろん相続財産には相続債務も含まれます。
- 遺産の範囲を確定させる
相続財産の調査は遺産の範囲を確定させるのが目的です。まず、遺産の隠匿を防ぐためにその確認を早急に行う必要があります。
遺言執行者は全資産の調査ができないときは、遺言書に未記載の相続財産がないかどうかについての確認を行うことになります。
- 遺産の範囲で争いになったとき
相続の争いにはこの遺産の範囲の関するものもあります。その財産が相続人固有のものなのか、被相続人の遺産なのかです。裁判所に法律関係を確認してもらうことになります。
- 遺産とされないもの
遺産の中には、祭祀財産のように相続財産とされないものがあります。
相続財産の調査も、慣れていないと大変な時間と労力が伴うものです。これも、遺言で遺産の範囲が明示されていれば比較的迅速な処理ができるはずです。
お困りでしたら、一度行政書士に相談してみてください。
相続財産は共同相続人の共有物です。
第896条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りで ない。
第899条 各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する
第920条 相続人は、単純承認をしたときは、無限に被相続人の権利義務を承継する。
第921条 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
一 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。 ただし、保存行為及び第六百二条各号に定める期間を 超えない賃貸をすることは、この限りでない。
二 相続人が第九百十五条第一項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。
三 相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意で相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。
相続財産とされないもの
第897条 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人 の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
○2 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。
死亡保険金に関する判例
平成16年10月29日 最高裁二小 平成16年(許)第11号
高裁の判断
「3 原審は,前記2(5)の死亡保険金等については,同項に規定する遺贈又は生計の資本としての贈与に該当しないとして,死亡保険金等の額を被相続人が相続開始の時において有した財産の価額に加えること(以下,この操作を「持戻し」という。)を否定した上,本件各土地を相手方の単独取得とし,相手方に対し抗告人ら各自に代償金各287万2500円の支払を命ずる旨の決定をした。」
◆事件の経緯
「2 記録によれば,本件の経緯は次のとおりである。
(1) 抗告人ら及び相手方は,いずれもAとBの間の子である。Aは平成2年1月2日に,Bは同年10月29日に,それぞれ死亡した。Aの法定相続人はB,抗告人ら及び相手方であり,Bの法定相続人は抗告人ら及び相手方である。」
「(4) 相手方は,AとBのためにa市内の自宅を増築し,AとBを昭和56年6月ころからそれぞれ死亡するまでそこに住まわせ,痴呆状態になっていたAの介護をBが行うのを手伝った。その間,抗告人らは,いずれもA及びBと同居していない。
「(5) 相手方は,次の養老保険契約及び養老生命共済契約に係る死亡保険金等を受領した。
ア 保険者をC保険相互会社,保険契約者及び被保険者をB,死亡保険金受取人を相手方とする養老保険(契約締結日平成2年3月1日)の死亡保険金500万2465円
イ 保険者をD保険相互会社,保険契約者及び被保険者をB,死亡保険金受取人を相手方とする養老保険(契約締結日昭和39年10月31日)の死亡保険金73万7824円
ウ 共済者をE農業協同組合,共済契約者をA,被共済者をB,共済金受取人をAとする養老生命共済(契約締結日昭和51年7月5日)の死亡共済金等合計219万4768円(入院共済金13万4000円,死亡共済金206万0768円)
(6) 抗告人らは,上記(5)の死亡保険金等が民法903条1項のいわゆる特別受益に該当すると主張した。」
最高裁の判断
「4 前記2(5)ア及びイの死亡保険金について 被相続人が自己を保険契約者及び被保険者とし,共同相続人の1人又は一部の者を保険金受取人と指定して締結した養老保険契約に基づく死亡保険金請求権は,その保険金受取人が自らの固有の権利として取得するのであって,保険契約者又は被保険者から承継取得するものではなく,これらの者の相続財産に属するものではないというべきである(最高裁昭和36年(オ)第1028号同40年2月2日第三小法廷判決・民集19巻1号1頁参照)。
また,死亡保険金請求権は,被保険者が死亡した時に初めて発生するものであり,保険契約者の払い込んだ保険料と等価関係に立つものではなく,被保険者の稼働能力に代わる給付でもないのであるから,実質的に保険契約者又は被保険者の財産に属していたものとみることはできない(最高裁平成11年(受)第1136号同14年11月5日第一小法廷判決・民集56巻8号2069頁参照)。
したがって,上記の養老保険契約に基づき保険金受取人とされた相続人が取得する死亡保険金請求権又はこれを行使して取得した死亡保険金は,民法903条1項に規定する遺贈又は贈与に係る財産には当たらないと解するのが相当である。
もっとも,上記死亡保険金請求権の取得のための費用である保険料は,被相続人が生前保険者に支払ったものであり,保険契約者である被相続人の死亡により保険金受取人である相続人に死亡保険金請求権が発生することなどにかんがみると,保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には,同条の類推適用により,当該死亡保険金請求権は特別受益に準じて持戻しの対象となると解するのが相当である。
上記特段の事情の有無については,保険金の額,この額の遺産の総額に対する比率のほか,同居の有無,被相続人の介護等に対する貢献の度合いなどの保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係,各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して判断すべきである。
これを本件についてみるに,前記2(5)ア及びイの死亡保険金については,その保険金の額,本件で遺産分割の対象となった本件各土地の評価額,前記の経緯からうかがわれるBの遺産の総額,抗告人ら及び相手方と被相続人らとの関係並びに本件に現れた抗告人ら及び相手方の生活実態等に照らすと,上記特段の事情があるとまではいえない。したがって,前記2(5)ア及びイの死亡保険金は,特別受益に準じて持戻しの対象とすべきものということはできない。
5 前記2(5)ウの死亡共済金等について 上記死亡共済金等についての養老生命共済契約は,共済金受取人をAとするものであるので,その死亡共済金等請求権又は死亡共済金等については,民法903条の類推適用について論ずる余地はない。
6 以上のとおりであるから,前記2(5)の死亡保険金等について持戻しを認めず,前記3のとおりの遺産分割をした原審の判断は,結論において是認することができる。論旨は採用することができない。」
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