遺言が必要な場合,遺言能力,遺言の効力,遺言の取消,遺留分,相続は遺言の時代,中里行政書士事務所
遺言をすべき人とは?
遺言は本来誰でもが書けるはずです。でも遺言はどうも気楽に書けるようなものではなく、気が重く神経を使うもののようです。
もちろん遺言を残すか否かはまったく本人の自由です。多くの方が高齢になって、介護を受けるようになって、老衰しかかってから決断をされます。
行政書士による市民相談会でも、親の死を境に相続問題がこじれてしまい、相続人同士が泥仕合の紛争の果てに家族関係が崩壊したという話を聞くことがあります。
相続での不満の原因は?
遺言がなければ、例えば親と同居し介護しながら面倒をみてきた者も別々に暮らしてきた者も法律上は対等に扱われます。
介護をしてきた側からすると甚だ不平等だということになるわけです。この状況も、もし遺言が残されていれば一変していたと考えられます。
気楽に書けばよい
遺言は いつでも自由に取り消すことができます。
遺言に書いてあることは亡くなるまで効力が生じないからです。ただし、遺言の取消しは遺言の形でなければなりません。
相続でもめることが明らかなとき
遺言をした方がよい場合があります。
例えば、子供がなく、両親も他界している夫婦の場合にはお互いに遺言で財産の全てを残された妻(夫)に相続させることができます。
遺言には、このように実情にあった実質的な公平を実現するはたらきがあるのです。
遺言が特に必要な場合とは?
- 夫婦の間に子供がいない場合
- 再婚をし、先妻の子と後妻がいる場合
- 長男の嫁に財産を分けてやりたいとき
- 内縁の妻の場合
- 個人で事業を経営したり、農業をしている場合など
- 相続人が全くいない場合
「東京公証人協会」のホームページより(抜粋)
遺言について
未成年者も遺言できるか?
第961条 15歳に達した者は、遺言をすることができる。
遺言をする時に遺言能力さえあればよい。
第963条 遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない。
第973条 成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時において遺言をするには、医師二人以上の 立会いがなければならない。
○2 遺言に立ち会った医師は、遺言者が遺言をする時において精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態になかった旨を遺言書に付記して、これに署名し、印を押さなければならない。ただし、秘密証書による遺言にあっては、その封紙にその旨の記載をし、署名し、印を押さなければならない。
遺言書は考えが変われば改めて作ればよい。
第1022条 遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。
第1026条 遺言者は、その遺言を撤回する権利を放棄することができない。
作成した遺言書は亡くなるまでは何の効力もない。
第985条 遺言は、遺言者の死亡の時からその効力を生ずる。
○2 遺言に停止条件を付した場合において、その条件が遺言者の死亡後に成就したときは、遺言は、条件が成就した時からその効力を生ずる。
注意すべきこと
- 遺言書が無効になる
第975条 遺言は、二人以上の者が同一の証書ですることができない。
- 遺言書は無効にはならない
第1031条 遺留分権利者及びその承継人は、遺留分を保全するのに必要な限度で、遺贈及び前条に規定する贈与の減殺を請求することができる。
相続は遺言の時代
最近入手した著書の題名です。 公証人 生田治郎 著 弘文堂 出版(15年6月)
この本には、さまざまな境遇の中で苦悩し、その思いを遺言で残そうと決断した人たちが多く登場します。いずれも解決の糸口を遺言に託したものです。
この本は次のことばで結ばれています。
「・・・・人生に往復切符はありません。そうした中でそもそも法律による共同相続に疑問を持っておられるならば、また、残される家族を思うならば、そして、人生の締めくくりを自己決定しておきたいならば、「死」という現実を強く意識する少しでも前に、勇気をもって遺言を残すことをお勧めいたします。」
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